日時は忘れたが、今月の朝のTVニュースで「宮崎駅から日南線の南郷駅まで、特急”海幸山幸”を土、日、祝祭日に限り運行する」事を知った。南郷には先月28日、Mさん夫妻とキャンピングカーで、一泊したばかりであるが、ニュースを見て直ぐ乗車を決意した。
以前から、JRの鈍行列車に乗って、のんびり旅行したいと思っていたので、それも併せ実行できると考え、日時を24日に決めた。往復で200キロを超えるので、JRのジパングクラブを利用できる。
それに加入すると、自動的に九州マイウェイクラブの会員にも登録され、その特典である、九州内のJRを4割引で利用出来る事は、大変大きな利点である。
これだけの割引は、僕等年金生活者にとっては、非常に有難い。前日に姶良駅で、会員証を提示して切符を購入した。片道158キロなので、往復購入で、特典の利用条件である200キロ以上になる。
宮崎駅から南郷駅までの特急券(500円)は、宮崎駅で購入する事にして、とりあえず姶良駅から南郷駅までの往復乗車券を、1人3,780円で購入した。天気予報は宮崎地方は雨であった。しかしこの日を逃すと、12月迄の土、日は予定が詰まっていて、断念せざるを得なくなり、運を天に任せた。
持ってゆくものは、缶ビールとお茶につまみ程度で、家人がリュックに入れ背負った。翌朝5時起床、姶良駅を6時ジャストに出発する鈍行列車(各駅停車と呼ぶべきか)に乗車した。当然世間は未だ真っ暗である。
「海幸山幸」は1日1往復で、宮崎駅を11時10分発であるから、そんなに早く出発する必要はないのだが、宮崎駅までの直行便が殆どなく、これを逃すと間に合わないのだ。
2両編成の電車は、流石に休日に加え通勤時間帯を外れているので、乗客は1人、,2人であった。天候は雨こそ落ちていないが、どうも曇り模様であり、雨を覚悟した。都城駅あたりから高校生達が乗ってきて賑やかになった。車外を見ると曇り空であるが、幸い雨は落ちていないようで、何とか一日このまま推移してくれるように祈った。
ガラガラの早朝電車
宮崎駅での乗降は社会人になってから、初めての経験である。小学生の頃、父母に連れられ、蒸気機関車に乗り父の故郷宮崎に何度か行った。清武駅を出たころ「安井 息軒生誕の地」と書いた看板があったのを懐かしく思い出した。昔の事である。
8時10分頃宮崎駅に着いた。客も疎らで、駅舎も鹿児島中央駅に比べれば、かなり小さく寂しい雰囲気である。取り急ぎ構内のパン屋さんで朝食を採った後、駅員に訊ねた。「海幸山幸に乗れそうですか」。彼は丁寧に応えた。「並んだ順番に乗車できますから、今なら大丈夫です」。出発2時間半前の話である。
特急券を買った。ここでもマイウェイクラブの特典が利用できる。4割引の300円で買えた。空模様は相変わらず曇りであるが、雨が降るような様子もなく、殆ど人気のないホームに、暫く2人で座っていた。
実に手持ち無沙汰であるが、デジカメと8ミリビデオを使い、駅周辺を撮影したり、ネットで調べた情報を読み返したりして時間を潰しているうちに、一人二人、指定された場所付近に集まりだした。聞いてみると、やはり乗車目的の客らしい。
そうこうしているうちに、大型のカメラを持った、雑誌の記者らしい人達数人も集まり、彼等に挨拶を交わしながら駅長や助役や駅員がやってきた。僕等は前から5,6列目に並んだが、出発30分くらい前には既に30人近い人達が並んでいた。雑誌記者と思しき人達が、僕等に向けてカメラを回すのが判ったが、僕も構わず乗客たちの様子をカメラに収めた。デジカメを持った小学生が一人、入線してくる「海幸山幸」を撮るべく、興奮気味に乗客を掻き分け、大きな声で何か叫んでいた。僕も初めて実物を観ることで、期待に少し上気していたようだ。
自由席確保のために並ぶ人達
JRのみならず、沿線各地の住民もこの観光列車にかける期待の大きさを、肌で感じた。このことは後でも述べる。宮崎駅には特別コーナーが設けられ、そのパンフレットが大量に並べられていた。その他の宮崎県の観光案内用パンフレットや、冊子には大々的に”海幸山幸”について、扉のページに載せていた。
10月10日が運転開始だったそうで、10~12日の連休は積み残しがあるかもしれないとの、予告がされていた事を、ネットで知った。これほど期待をして始めた計画が、特定日だけの営業である事に、当初僕には解しかねた。僕等には判らない事情があるにしろ、小出しにする事が一つの営業政策なのであろうかと。運転期間も来年2月28日までとなっている。ひょっとすると南郷町をはじめ、付近の市や町の町興しに、一時的に利用したのかも知れない。
入線した観光特急「海幸山幸」
ま、それはともかく入線した2両の列車は、1両目は予約金を払った乗客が乗るので、ざわついた様子は見られなかったが、自由席の2両目は、何とか座りたいと思う人達が、足早に乗り込む様子が見て取れた。それでも座れなかった人は10名もいなかったと思う。開始5回目迄の運転状態から、集客予想はついたであろうから、特定日だけの運転は間違いではなかったと、JRは考えたかもしれない。僕は結構座れない人が多いのではと思っていたのであるが。
車両は気動車で、席数は1号車「山幸」は指定席21名、2号車「海幸」は自由席で30名である。実に広々とした車内空間で、外観にもインテリアにも、飫肥杉がふんだんに使われ、木の匂いと共に暖かさを実感できた。山幸には車椅子対応のトイレも完備されている。確認した事ではないが、照明は現在話題になっているLEDを使っているようである。ブラインドも、間違いなく木製のはずだ。床も杉材であり、肘置きも木製である。
海幸の車内
山幸の車内
山幸のトイレ
床も杉板である
ブラインドも木製
照明はLED
出発前までのホームでは、車両本体の撮影や、車両前での記念撮影をする人達で、ざわついていた。駅長や駅員が最敬礼して見送った、定刻に発車した列車では、あちこちでデジカメやビデオの撮影をする人達でなんとも落ち着かない。
一駅過ぎる頃には、車内はようやく落ち着きを取り戻したようなので、僕は冷えたビールを飲み始めた。一般の特急みたいに弁当や飲み物の販売はなさそうで、女性客室乗務員が特製のソフトキャラメルを売っていたようだ。
僕はこの日南線には初めて乗る。海岸線を走り、太平洋を眺めながら南下するのだと思い込んでいたので、青島駅を出て暫くすると、殆ど山の中を走る列車に驚いた。結局、油津までは余り海を眺める事は出来なかった。
それでも「鬼の洗濯板」や、南郷町近くの奇岩が見える場所に来ると、列車は暫く停車したり、速度を落としたりして、鑑賞や撮影の時間を与え、乗客のサービスに努めていたのは評価に値する。これぞ観光列車である。
鬼の洗濯板
奇岩の群
途中の停車駅では「海幸山幸」と書かれた幟が、何本も立てられており、地元の人たちが、旗を振ってホームで迎えてくれる。カメラを向ける地元の人達もいて、この観光列車に掛ける地元の人たちの熱意を、十分に感じ取れた。
12時55分頃着いた南郷駅には、これまた緑色のジャンパーを着た地元の人たちが出迎えてくれ、500円でチケットを買うと、マイクロバスで近辺の港や、近くの観光地に連れて行くサービスをしていた。
日南駅あたりから小雨になっていたが、僕等は先月の旅行でこの町の規模も、地理も大体理解しているし、目的は先月食べたカツオの刺身料理を、今回も食べる事なので、約10分歩いて目井津港に着いた。前回同様大きなタライに乗せられた、カツオ料理に舌鼓を打ち、美味いビールを飲んで、雨が止んだ港に祭られた神社に参拝した。
不思議な事に、15時45分の復路の列車には往路の3分の1程度の乗客しか乗っていなかった。残りの人は何処に行ったのだろうか。前の普通列車で帰ったのか、どこか別の観光地に行ったのか。僕にとってはどうでも良い事であるが、不思議なことではある。
宮崎駅へ向け出発を待つ「海幸山幸」
女性客室乗務員が運転士の帽子と、女性客室乗務員の帽子を持って周り、乗客がそれを被って記念の写真を撮ったり、記念グッズが当たるくじ引きをさせたり、細やかなサービスをしていた。
ほぼ、15時間に及ぶ各駅停車と、観光特急の旅であったが、割引を利用出来た事と、職員達の昔と段違いに増した融通性や丁寧な対応とに対し、JRに感謝の一日旅行であった。
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