友、遠方より来たる。
この1週間に3名の友が訪ねて来た。1名は大学時代の友人、2名は中学時代の友人である。大学も中学もクラス会として2年毎の開催が決まっており、どちらも来年の予定である。因みに高校は来月下旬、5年ごとに行う記念同窓会として行われる。
東京に住む大学時代の友は昨年のクラス会寸前、身内の不幸で参加出来なかった為、熊本で行われた高校の同窓会のついでに鹿児島まで足を延ばす事にしたらしい。新幹線で到着した友の希望で、直ちに母校の学部を訪ねる事にした。第1回のクラス会を平成5年に僕の幹事で行ったが、集合場所としてそこを選んだものの、校内散策に掛ける時間が取れなかった。
卒業以来45年経っているので、全て様変わりしている。当然先生方は退職されているので、知っている人は誰もいない。事務室で挨拶すると全員起立しての返礼であった。木造の校舎は当然鉄筋に変わっており、場所も昔のままではない。実習室、実験室の場所など全く判らなかった。
学部裏門
一般教養から専門に移った時、学部の前は海であった。国道の下の水門からヨット、カッターを出した昔を思い出しその水門を捜した。あった!二人ともほぼ同時に感嘆の声を上げた。水門跡が記念碑として残されていたのである。実に嬉しく安堵した。思い出深い場所故に、有難く感謝したい気持ちになった。
水門跡
卒業後2~3年の間にその海は埋め立てられ、現在は球場、ホテル、放送局その他の施設が立ち並んでいる。綺麗な松原のヨットハーバーがあったことを知っている人も少なくなっていくだろう。土地の少ない鹿児島市としては、埋め立てが土地確保の最善策であったにしても、海に関係する学部の卒業生としては寂しい限りである。約1時間半、回顧談に時間を忘れ隅々まで歩き回った。
昼食を取った後桜島へ行きたいと言う彼の願いで、フェリーに車を積み20分程度で現在は鹿児島市になっている桜島へ渡った。彼は学生時代1回しか渡った事が無いと言う。
鹿児島の話になると「桜島に良く行かれたでしょう」と聞かれるらしい。その都度「ええ、まあ」とかでお茶を濁したが、今回良く観察し脳裏に焼き付けようと言っていた。晴れて、涼しい絶好の観光日和であったが、期待した爆発は起きなかった。海釣り公園で釣り客と話したり、溶岩道路を走り、林 芙美子の文学碑を訪ねたりして僕の家に落ち着いた。
フェリーから桜島を。
海釣り公園での釣り人。
級友の消息についての内容が、仕事から本人や連れ合いの訃報や病気に変わるのは、この年齢になると何も不自然な事ではないのだが、飲んでいてもやや湿っぽくなるのは避けられない。この話から何故そのようになったのか思い出せないが、来年僕が上京して関東在住の級友達と会う事を約束させられた。
3日後、中学校の同級生が2人訪ねて来た。一人は福岡から一人は熊本からであり、それぞれ5年半ぶりと1年半ぶりに会う友である。中学時代は常に一塊で行動していた仲の良い級友であった。
「去るものは日々に以って疎し」、よく言ったものである。進んだ学校が違い、さらに勤めた会社が違い、趣味が違ったり生活する都市が違えば、よほど「親友、心友」の間柄でないと次第に交情が薄くなるのは当然の事である。
二十数年前に一寸した行き違いで、一時交友が途絶えていた一人が、関係修復のためにもう一人を誘って来たのであるが、個人的には全くと言っていいほど、不快に感じていなかったので驚くより途惑った。
自宅に訪ね来た彼等と挨拶を交わし1時間程度の雑談後、3人で鹿児島市のホテルにチェックインした。夕方から生憎の雨になったが天文館の居酒屋で飲み始めた。友としては、これで一区切り付けたいという気持ちであったろう。
核心の行き違いについては触れず、当たり障りの無い会話と、級友の消息が話題の中心であった。彼が当時の心境を全て吐露するには、僕との距離が縮まっていなかったからであろう。熊本市でも一、二番のマンモス校であったので、悲しいかな級友の顔と名前が一致しない事もあったが、次第に当時の先生方の顔、出来事なども懐かしく思い出されてきた。
僕の気持ち一つで3人が再度、昔みたいな仲間として付き合えるような雰囲気でもあったが、希薄になった関係は頻繁に会ったり会話しない限り、その関係を続けて行くことが難しい事は、過去の経験で良く解る。
翌日は近くの観光地を案内する予定にしていたが、彼らは純粋に僕と飲み、話す事を目的で来たのだ。僕の誘いも断り、チェックアウト後中央駅から新幹線で帰って行った。
中学時代あれほど仲の良かった仲間も、数年に一回程度の接触では当時の親近感は保てず、距離を保っての交友関係が今後続くであろう。二人に対して申し訳なさを感じながら帰宅した。
遠くの親戚より近くの他人と言われる如く、人間は晩年になると万一の場合や、日常お互いが助け合う為には近くに住む友人が頼りになる事が多くなる。遠くの友人を蔑ろにする気持ちは全くないが、居を定めた地域の人達や、近くの友人達との交友は心して深める必要がある。今回の古い友人達の来訪を切っ掛けに、色々考えさせられた日々であった。
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